新型コロナウィルス@東京:ニューヨークは2週間後の東京か?随時更新
コロナウィルスが猛威をふるっています(→国内感染状況:東洋経済リアルタイムグラフ)。そして、コロナウィルスに反応している社会があちこちにあり、いろいろなところにすごく影響が出ています。これはなぜなのか考察してみましょう。
■コロナは怖がるべきものか?
コロナウィルスは現在のところ、日本においてはそれほど致死率の高い超危険なものではないようです。70歳以上の高齢者、糖尿病や心疾患などの持病のある人たちの致死率が高いこともあり、現在発表されている致死率は1〜2%弱です。この数字は結構高い(100人かかれば1〜2人は死んでしまう)のですが、ウィルスに感染しても発症しない人、発症しても検査を受けない人もいるのでそういった人を合わせるとおそらくもっともっと低い値、たとえばインフルエンザの致死率と同じくらいかそれ以下(0.1%〜0.05%以下)になるのではないかと思います。
インフルエンザの症状は激しいです。高熱、関節の痛み、悪寒。インフルエンザの症状が出たまままともに日常生活を送ることは難しいので、必然的に人は病院に行きますし、そこでは必ずインフルエンザの検査をしますので、おのずと母数(インフルエンザにかかったことが認定された患者数)は増えていきます。なので、インフルエンザでの死亡者数が何万人といたとしても、インフルエンザ陽性となった圧倒的多数の人々からすると致死率としては低くなります。
なので、こういった病気の怖さを評価するためには、感染者の総数がわからない=本当の数字がわからない「致死率」ではなく、「死亡者数=単位人口あたりの死亡率」をカウントするのが最も合理的だと思います。
例えば狂犬病の致死率はほぼ100%です。狂犬病にかかって発症するとまず生きられません。世界で年間5−6万人が狂犬病で命を落としているとも言われています。確かにとても怖い病気ではありますが、狂犬病は致死率0.01%のインフルエンザよりも1000倍怖い病気でしょうか?答はノーです。なぜなら、この病気はある程度コントロールできていて、国内ではほぼ感染しないからです。日本では狂犬病で死亡するリスクは、インフルエンザで死亡するリスクに比べて圧倒的に低いです。狂犬病が年間0〜2人死亡なので、2人だとして1億人あたりの死亡者率は0.000002%、インフルエンザは年間約1万人死亡として0.01%。つまり狂犬病よりもインフルエンザのほうが5000倍ハイリスク、ということになります。
では、新型コロナに関連する最近の数字を検証してみましょう。
まず予備知識として、東京では年間何人の方が亡くなっているのか。現在東京都の人口は1384万人です。そして年間の死亡者数は12万人。人口の約0.87%が亡くなっています。これを一日に平均するとおよそ330人。その理由は様々ですが、ここにはがんや心疾患、事故、事件の数字も含まれます。また、この280人の中には「新型コロナではない肺炎の患者」も含まれています。そして、新型コロナの死亡者数ですが4月1日現在の東京では1日に7人となっています。
一方、肺炎全般での死亡者数ですがこちらの統計によると、日本全体でだいたい年間10万人です。これをざっくり東京都の人口比率から計算すると、年間におよそ11000人、1日あたりの推定肺炎死亡者数@東京は約30人です。
普通の肺炎で亡くなる方の中には今回、新型コロナ肺炎で亡くなる方もいるはずなので、この30人という数字がひとつの境界線になるかと思います。新型コロナで亡くなる方が一日に50人、100人と増えていけばそれは異常事態なので、そうならないように今必死に抑え込もうとしているわけです。
■新型コロナウィルスのパワー
新型コロナの影響について、世界の状況はこちらジョン・ホプキンス大が作成したチャートで随時更新されています。そして、コロナウィルスが実際の持っているパワーというのはどんな感じなのでしょうか。この動画におけるNIH(米国立衛生研究所)の峰宗太郎先生の解説によると…
- SARSよりも毒性は低いが感染力はやや強い
- 普通の風邪やインフルエンザよりも感染力はやや弱いが毒性はやや強い
- 鼻水にウィルスが大量に含まれている特徴があるので飛沫感染、接触感染がおこりやすい
ことがポイントとして挙げられていました。
先程は東京での死亡者数を検証しましたが、今度は「2週間後の東京」と言われているニューヨークで同様の検証をしてみましょう。
ニューヨーク市の人口は862万人。仮に日本でのレートをざっくり当てはめると通常時は1日に約19人が肺炎で亡くなっていると推測できます。ここで4月2日のニューヨーク市での新型コロナ肺炎の死亡者数は258人で、これは明らかに異常な数字であると言えます。
なぜ、これほどまでにニューヨークでの死者が多いのか、また今後の東京では同じように犠牲者が増えていくのかを考察していきます。
※以下、ニューヨークはNYとします。
■東京はNYのようになるのか?
NY市とは(以下Wikiより引用):ニューヨーク市はアメリカ合衆国北東部の大西洋に面し、巨大なニューヨーク港を持つ。市はブロンクス、ブルックリン、マンハッタン、クイーンズ、スタテンアイランドという5つの行政区(バロウ、ボロウ)に分けられる。2010年の国勢調査における市域人口は817万5,133人を数え[2]、陸地面積は790km2[10][11]、人口密度はアメリカ国内の主要都市の中で2位である[12]。→NY州とはまた違う。NY州の中の都市エリアがNY市。シティとも呼ばれる。
NYは言わずと知れた世界でいちばん有名な街です。そして、NY市内はどんな雰囲気かというと、一言で言えば「発展途上国の総本山」です。道はガタガタ、建物は古い、人と一緒にゴキブリが歩いている、あらゆる階層の人種が一緒くた、生きているか死んでいるかわからない人が路上にいる、狭くて超高額のマンション、密集する高層ビルのせいで晴れていても地面には太陽の光が届かない、危ない車の運転と常時聞こえるクラクション。道端に流れる何かよくわからない成分と色の汚水、太った野良猫ほどのサイズのネズミ…。
この究極のごった煮感が、世界中の人々をひきつけ、かつどこの国出身の人でも馴染める空気感になっています。私は正直苦手な空気です。
この街では、食べ物が高く(水300円、オレンジジュース400円、サンドイッチ800円、ラーメン1800円)ろくなもの売ってないし、レストランでランチすると3000円から。こんな状態では大体の人はジャンクフードに走ってしまいます。アメリカ人の異常な体型についてはご覧になった方も多いと思います。球体ボディです。もちろんそうでない人もいますけど、日本人にはいないスケールの方がたくさんいます。
あとは、格差。NY市内にはアッパーウェスト、イーストという高級住宅地が存在しますがその周辺、特にちょっと北に行ったところのハーレム、ブロンクスあたりは有名な黒人街でその昔は治安も極悪で有名だったところです。このエリアに住む人達は、いまでもそれほど恵まれた環境にいる人達ではありません。つまり貧しく、医療レベルも期待できない、そもそも保険にすら入っていない人たちも多く住んでいます。また、更に周辺エリアのブルックリンやクイーンズのうち、マンハッタンから遠いエリア、つまり家賃が安く住民の所得が低いエリアがありますが、こういった地域の住宅事情は悪く、狭くて換気が行き届かないような古い建物であることも多いです。
NYで新型コロナ感染が爆発的に増えた理由は以上全てだと考えられます。まとめると以下のようになります。
NY市の保健局が実際に新型コロナにかかっている患者の分布を表したマップがあります(地図拡大)。※リンク切れてしているときは下からDLしてください。
これを見ると患者の多い地域はまさに低所得者層のエリアと一致します。雑然とした不潔な町に住んでいる低所得者層はジャンクフードを摂る頻度が高く、体の基礎免疫力も高くないと思われます。また、狭いマンション住まい、しかもルームシェアも多い住環境では発症した人と隔離するだけの十分なスペースもないので、どんどんまわりの「そもそも感染しやすい人たち」に感染が広がっていく。この悪循環と、肥満の人ほど重症化しやすい肺炎の特性もあり一気に患者、ひいては死者数が増加しています。
一方、東京はどうか?
全てにおいてほぼ真逆です。なので全く心配はいりませんよ、ということではないですが、日本はNYのようにはならないかなと思います。日本人の基礎免疫力の高さ、健康に対する関心の高さ、整然とした国民性、清潔な都市部。あと、未検証ですがBCGを国民のほぼ全員が接種している説、集団免疫をすでに持っている説もあります。
政府が世界に先駆けていち早く学校をクローズしたり、自粛の要請をしたのはひとえにオリンピックを開催する、という目的が最も大きかったからでしょうが、それも奏功していると思います。今の日本の圧倒的に少ない新型コロナの死者数は、日本の社会が整然としていること、日本人がそもそも健康体であること、そして学校のクローズをいち早くキメたことが大きく寄与していることは確実です。
■もうひと月だけ、がんばろう。
ただ、油断は大敵です。このまま、奇跡の国として最後までこのコロナ戦線を戦い抜きましょう。まずは個人でかんたんにできる「コロナにかからない厳選ひとつだけ」の対策から。ついでに少し踏み込んだ風邪対策。そしてある程度の行動自粛は必要です。ニューヨーク州の倍ほどの人口を抱え、アジアからの移民も全米一のカリフォルニア州で、新型コロナの死亡者数をNYの10〜20分の1に抑えられているのはひとえにロックダウンのタイミングが5日だけ早かったからだとも言われています。なので「早いタイミング」で人々の「物理的な交流をシャットアウト」することは非常に効果的です。
ただ、自粛が行き過ぎると今度はとんでもないことが起こります。
それは日本人にとってコロナよりも怖い「自殺」です。最近はだいぶ減ってきているようですが、これが増えてくる懸念があります。それを何が引き起こすのか?過度の自粛です。
自粛=経済活動の縮小です。まともに影響がある具体的例を上げると、俳優です。バンバン売れまくって年に何千万も稼ぐ上位0.01%の俳優ではなく、明日を夢見る俳優たちの話です。これはすでにNYでも問題になっているのですが、彼らは昼間レストランで働いて夜のショーで俳優業をこなします。生活のすべてをその掛け持ちの職で賄っているのですが、ステージ公演は中止、レストランは休業となると彼らはたちまち両手をもがれたような形になります。失業です。ほかにも似たような境遇の人達はたくさんいるでしょう。
失業率と自殺率には強い相関があります。
この記事を見ていただくと端的にわかるのですが、えげつないほどの相関です。つまり、失業=ほぼ自殺なのです。
このことは行政もよくわかっているようで、新型コロナにかかる経済活動の自粛についてはとても慎重に議論し、見極めを行っています。この部分は非常に上手く対処しています。
新型コロナの犠牲者はお年寄りがほとんどです。そして、失業率の上昇で死んでいくのは若者たちです。
どちらがより重要か?ということはもちろんわかりませんが、コロナ対策をしっかりやればやるほど高齢者の死亡者数は減り、しかしやりすぎれば若者の死亡者数が増えるというパラドックスの狭間で、むずかしい状況にいることは確かです。
ですが前述の通り、世界的に見て日本人の新型コロナでの死亡者数の突出した低さは、統計上の誤差はおそらくあるにせよ、日本人の特質と日本社会の特長によるものです。なので、繰り返しになりますが、NYのようなあまりガチガチな「外出禁止!公園閉鎖!」みたいな規制というよりも、みんなが頑張ってできる対策を存分にやる、それもたったの1ヶ月ほどやるだけで、奇跡の国民国家として再度世界から称賛されるでしょう。
対策の方法は、政府が示しているとおりです。とにかくこれをよく読んで、できることから片っ端やっていきましょう。学校も、せめてもう2週間は休みにした方がいいです。がっちり対策が必要なのは新年度アタマのほんの1ヶ月だけですよ!