子供が幸せな大人になる唯一の本質:他人のために生きることを学ばせる
幸せになるためには、周りを幸せにするのがいちばんの近道です。もちろん、好きなことをやり続けることができれば面白おかしく毎日過ごせるように思いますが、実はこれは継続的な幸せには結びつかなかったりします。好きなことばかり、やっているその時は楽しいですけど、結局すぐに飽きますよね?いくら焼肉が好きだからといって、毎日はさすがにきついのと同じことです。
人間の感覚は、変化するものに対して敏感に反応するようにできています。寒い冬の日、外から帰ってすぐに入るお風呂は格別です。でも、そこから2時間お風呂に入っていたら、さっきの格別な感覚を忘れてしまうほど飽きが出てきます。実際は30分も入ればビールを飲みたくなるでしょう。それほど、人間の感覚は常に変化を求めています。
大人になって本当に自分の好きなものに出会って、変化のない生活でも幸せを感じられればそれもまた理想的なオプションですが、もうひとつダイナミックな幸せのカタチがあります。人のために生きる、ということです。
私たちは皆、人のために生きることで価値が生まれます。なぜなら価値というのは客観的なもので、みんなからありがたがられて初めて評価される、ということになるからです。みんなから大切にされる存在であることは、社会的に健康である、という状態です。一方、自分のために好きなことをする、好きなものを食べる、好きな人たちと一緒にいることは、精神的、肉体的に健康=個人的に健康な状態であると言えます。継続的な幸せのためにはこの両方が必要です。
振り込め詐欺グループのトップがいたとします。彼のもとには毎日たくさんのお金が転がり込み、広大な屋敷に住み、好きなものを食べ、物質的には自由な生活をしています。ですが、心のどこかで後ろめたさがあるはずです。
小中学校でありがちなグループも、いじめに代表される小さな権力も、誰かを犠牲にして、その上に成り立っている虚構の楽しさや人付き合いがあります。これはフェイクです。持続可能な楽しさや幸せではありません。
では、未来にわたって続いていく幸せとは何でしょうか?ヒントとして、より多くの普通の人たち、つまり社会一般のみんなを幸せにする力がなければ、気持ちの平安や幸せはやってこない、ということがあります。あなたの居場所を作っているのは、あなたを取り巻く社会だからです。社会にとってありがたがられる存在であればあるほど、より快適な居場所=幸せなポジションが約束されます。また、他人や社会と関わることは、1日として同じ日がない=変化に富んだ刺激的な毎日で飽きることがない、ということです。いきなり社会と関わる、というと大層に聞こえますがつまるところ、大切なのはまず、あなたのすぐそばにいる人達を幸せにすることです。妻や夫、父母、子供たち、友人達や同僚たちです。彼らはあなたのクライアントです。あなたの力ですぐにでも幸せにできる人たちです。
特に子供にはあなたのすべての人間力をフル活用して接しましょう。とことんその子の幸せを考えましょう。かわいい子供になついてもらうために媚びるのではなく、彼らを本当の意味で世界の真ん中に導いてあげましょう。では彼らをどうやって導くか。子供への教育の本質とは何でしょうか?
それはただひとつ、その子が自分の力で生きていける力をつけてあげることです。それ以外にはありません。
かわいい子供と、いつまでも一緒に暮らしたいと思うことは親のエゴです。子供の好きなものだけを与えるのも、子供の可能性を摘み取る手段としては最も効果的です。すぐ抱っこする。ダメです。今日からやめてください。3歳になったらドアは自分で開けさせましょう。クルマのチャイルドシートにも自分でよじ登らせましょう。ただし、シートベルトは親がしっかりしてあげてください。なにか質問をするときには、オープンクエスチョンで質問しましょう。「今日はハンバーグでいい?」よりも「何が食べたい?」と聞きましょう。自分のことがしっかりできるようになって初めて、人に与えられる価値を生み出すことができます。
子供が生まれた瞬間に、親はその子を手放すイメージをしっかり作ることが大切です。あなたの子供はあなたの愛玩動物ではなく、あなたのいなくなった未来を生きるあなた自身であり、次の世界を担うあなたの生まれ変わりです。高速で変化する世界に適応して、その流れを泳ぎ切る力を、しっかり持たせるためには、その子のすべきことを親がやっている場合ではありません。
とにかく、自分のことは自分でさせる。自分の頭で考えさせる。自分の足で歩かせる。この基本原則をしっかり守りましょう。親が、周りが手を出した回数分、その子の成長は遅れていきます。自分でさせるということは、失敗をさせるということです。なみなみ牛乳を注いだコップからは、液体の特性を学びます。なみなみ水を注いだコップからは、水はこぼしても牛乳ほどの面倒くささはないことを学びます。
さっさと自分の事ができるようになった子は、周りの子たちを助けるようになります。そうすればそのグループの中で役割とリーダーシップがうまれ、その子の人間としての価値が上がっていきます。価値が上がった子は、次第に好きな事ができるようになってきます。そのグループ内の他の子たちや親が、それを容認するからです。そして世の中のほとんどの事は「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」で決まります。それは、言葉そのものには全く意味がなく、その言葉の裏にある文脈、コンテクストにこそ本質があるからです。信用、という言葉に置き換えることもできます。信用がついてくればしめたものです。幸せはもうそこまで来ています。
子供の能力を高め、他人を幸せにすることの意義を認識させ、実践させる。
これが子供を幸せにする最短距離です。これよりも短い近道はありません。もっとずる賢いルートがあったとしても、最終的には必ずここに戻ってきます。そして、その子は将来、かならずあなたを幸せにしてくれます。