GPW-1000Tレビュー:ウレタンモデルでおそらく最高級なG-Shock。BUT!
メーカー、モデルには開発チームが必ずいて、チームのメンバー個々は言わずもがなですが人間ですよね。ゆえに、得意な部分と不得意な部分が必ずある。この時計は多くの美点を抱えながらも、煮詰め切れていない部分がやはりあります。
ザ・タフネス!
時計そのもの、オブジェとしての完成度は間違いなく世界一級です。ひたすらゴツく、堅牢で先進素材のカタマリです。特にベゼルの64チタンは、純チタンの弱点である「柔らかさ」を克服した合金で、超高性能素材です。スーパー頑丈で軽く硬い64チタンは、加工にかなり難のある素材ですが、物を作る材料としてはこの上なく優秀です。敵にすれば恐ろしいがいざ味方になるとこれ以上心強い存在はいないです。
あとは言わずもがなのサファイアガラス。これもキズフリーの最高峰素材。高級時計の風防には必ずこのサファイアガラスがおごられています。ただのガラスじゃございません。人工ダイヤモンドに近い硬度で、傷がつかずに透明性を永く維持できます。
バンドはカーボンインサートバンド。ちぎれることはありません。このバンドがちぎれる前に、あなたの手首は…。カーボンかどうかは外側からは見えません。内側はクリアになっているので、カーボンの構造がよく見えます。このカーボン柄を表に出すかどうかは開発段階でかなり議論があったと思います。柄を表に出してほしかったなー。
内部構造はもう割愛します。G-Shockなんで。「耐衝撃」をウリに累積出荷台数が軽く1億を突破したG-Shockシリーズの優秀な設計は今更語るべくもないでしょう。とにかくタフです。堅牢です。20年で30本ぐらいG-Shock使ってきましたが、本当に壊れたことは一度もありません。海、山、バイク、スキーで酷使していますが、本当に一度も不具合が出たことはありません。
卓越した先進機能
この時計は電波×ソーラー×GPSという無敵のファンクショナルコンビネーション。全部入りG-Shockって感じです。これらの機能を最高級品質の素材と構造で包み込んでるのですから、まさにスキなし。1ミクロンの隙もありません。
弱点
ブツとしてのクオリティは最高!って書きました。その通りです。なんですが、腕にはめて使う実用品としての評価、「腕時計」として考えるとちょっと違ってきます。以下の理由で日常使いはしんどいかもしれません。
- ごつすぎる、そして分厚すぎる。ダイブコンピュータか?
- リューズが当たって痛い。
- オートLEDではない。なんで?
ごついのは好きな人にはたまらないと思うのですが、何事もほどほどに、と思うわけです。もう、今川焼が乗ってるかのような存在感です。ふざけてるのか?と思うぐらいの、絶対いらないでかさです。
で、このデカさが災いして、リューズがまた痛いんです。痛リューズ。手首の甲に当たるんですよ、リューズが。で、リューズもデカいうえにツンツンにとんがっているので、手首に容赦なく当たります。特に、岩場で左手をついたときなんか、手のひらで岩をグッと押さえようとすると、手が手首方向に反り返りますよね?そんなとき、手の甲、手首とのリンク付近に、デカいボディが押し込んでくるデカいリューズが容赦なく手の甲に突き刺さります。もうグイグイと。これは本当にいただけない。アウトドアウォッチとしては致命的です。まぁこれは右手に時計を着けることで解消するんですが、デカいでしょ。重いでしょ。右手は動かしにくくなります。あと、時計装着時に自慢の機能群が使えませんね。
G-Shockのリューズ問題というのは、実は最近の問題です。ご存じのとおり、G-Shockは長いことリューズレスでした。ボタンしかついていなかった。リューズは機械式時計や、クォーツでもリューズの歯車でゴリゴリ時刻合わせするためのツールでした。だからデジタルベースのG-Shockでは必要のないパーツだったんです。
ですが、カシオは気づきました。高級機の利益率は半端ないということが。1万円のデジタルG-Shockを売るよりも、高級時計に似せた高級なG-Shockを売る方が手っ取り早く稼げる、と。で、高級機のシンボルはと言えばリューズじゃね?となったとしか思えません。もちろん、デジタル機ならではの多機能さを発揮するためにはボタンオペレーションよりもデジタルリューズでやったほうがやりやすいです。その点は大いに認めます。ただ、その多機能性を1日に何回発揮するのか?ということなんです。
リューズが損ねる装着感は、まさしく致命的です。
腕時計なんて、存在価値=腕にはめていること、なわけですから、装着感が悪いとその存在価値を大きく貶めるわけです。ハーバード卒で事業収入年間1億、向井理みたいなイケメンでも、付き合ってみてがっかりすることってありますよね?申し訳ないですが、コイツがそいつです。
ガリガリリューズにしない方法はあると思います。まずリューズのエッジを落とすこと。角を丸くする。つぎに薄くするか直径を小さくする。そしてオフセットする。オフセットリューズの成功例として古くはSEIKOファイブ、最近だとベルトゥッチですね。リューズ後発のG-Shockなんで、その辺はしっかり改善されていくのだと思います。実際、Protrek PRW-60なんかだとその辺だいぶマシです。
あとね、なんでオートLEDがついていないのかが謎なんですよ。MRG-1000もLED機能はあるのにオートはついてなさそうです。持ってないのでわかりませんが。オートLED機能を愛用していらっしゃる方って結構いると思うんです。
暗いときでもどんな時でも、腕時計は見えないと付けてる意味がないですよね。「壊れない、止まらない、狂わない」は本当にすげーっておもうんですけど、そこに「見えない」を入れるべきではないと思うんですね。強く。もうほんとに、何も考えずにすべての機種でオートLEDつければいいのにと思います。