子供の叱り方
子供を叱るとき、叱ったあと、あなたは罪悪感を覚えますか?
何のために叱るか。そもそもしつけとは何か。子育ての大大基本は、その子のためになるかどうか。でもこの解釈は意外と難しい。
例えばあなたが感情的に子供を叱ったとする。きつい言葉で、子供のしたこと以上に叱ってしまった。そんなとき、それをどう解釈すべきでしょうか?私はダメな親だ、感情が抑えられない、私は子育てに向いていない、など。基本ネガティブになると思います。そしてそれがストレスになると思います。
実は少し違います。
怒っていいんです。虫の居所が悪いことは、まぁよくあることなんです。そういう空気の中、叱られるようなことをする子は、普段の4倍の確率で叱られるのです。社会に出ると、そんなことは普通にあります。夫婦喧嘩中の上司を怒らせると、上司の妻に対するストレスも、こちらが肩代わりすることになります。二回連続取引先を怒らせると、しばらくは取引中止になるでしょう。
状況
親の機嫌が悪いときに、いつもの5割増しで怒られた経験のある子は、状況を読むようになります。これはとても大切な訓練です。いま風向きがどうなっていて、いまこの話題はこの場に適切かどうか。場の空気を感じること、それを自分の行動に反映すること。まさにAIが苦手とする分野です。刻一刻変わっていく状況をつぶさに観察できる能力は、今後世界がどれだけ変わっていっても、人と人が関わっていく以上、習得すべき必須の能力です。
また、状況とは誰にとっても公平なもので、誰にもコントロールできません。世の中のいろいろなアクシデントも、100%誰が悪いと決められるものではなく、ほぼ「状況が悪かった」としか、本質的には言いようがないのです。
例えばこんなお話があります。
あるところにとても悪い政治家がいました。すごく力が強くて、とてもお金持ちで、そのお金はすべて、人々から詐欺同然で搾取したものでした。その町の人々はみな貧しく、ろくにご飯も食べられなかったため、世の中を変えるエネルギーもありません。またその貧しさ故に、多くの子供が飢えで亡くなっているような状態でした。そんなとき、極限までお腹を空かせた一人の少年が、その悪徳政治家の家に忍び込みました。自分が餓死しないために食料、もしくは金目の物を奪うことが目的です。
家に忍び込むなり悪徳政治家に見つかり、けしかけられた番犬が少年に襲いかかりました。必死の抵抗を続ける少年が振り回した手が、政治家の胸を直撃し、普段暴飲暴食を続けていた政治家の弱った心臓にショックを与えてしまい、その政治家は死んでしまいました。少年は軽いけがで済み、また政治家が亡くなったことで、不正にためこんだ財産は人々に還元され、飢えることはなくなりました。
ここでこのお話の結末を普通に考えれば、少年は殺人で起訴されて終わりでしょう。ただ、悪徳政治家の罪はどうなるのでしょうか。悪徳政治家が人々から搾取し過ぎたために、それが自分のところに跳ね返ってきたという解釈もできます。この案件はどちらに転んでもおかしくない案件です。少年は強盗殺人犯なのか、あるいは民衆のヒーローなのか。この少年の運命を決めるのは「状況」です。
この少年はどんな少年だったのか。札付きの悪なのか、みんなから慕われていた正義漢なのか。またこの少年を裁く人たちが、悪徳政治家の仲間なのか敵なのか。人々はこの事件についてどのように感じているのか。少年犯罪を助長しないため少年を厳罰に処すのか、あるいは不正な蓄財で民衆を苦しめる政治家を今後二度と出さないために、この少年の無罪を願っているのか。
…
子供は、とても鋭い感覚を持っています。これから生きていくこの世界が、どんな世界なのか、常に感じながら、その幼い脳に焼き付けながら日々生きています。
だから、世の中の真実を、その厳然たるルールを、まずあなたが教えてあげるべきなのです。
→ご参考:怒っていいとき、叩いていいとき