子供を上手に叱る:叱って良いときと叱ってはいけないとき
過剰な虐待をされている子がときおり報道されますが、それで子供を怒ること、叱り飛ばすことをためらってはいけません。ガンガン叱りましょう。そして場合によっては子供を叩いていい時もあります。
毒をもって毒を制す
子供を怒る、叱る、また叩くということは、子供にとってはかなりのストレスです。一番身近で、心理的にも物理的にも100%近く依存している親から、ガツンと否定されるからです。しかし、私たち親は、これをうまく使っていくべきです。
病気になると、医者は薬を処方します。薬は言い方を変えた毒です。たとえば菌を殺すための薬、といえば普通に聞こえますが要するに殺菌剤です。狙いや成り立ち自体は殺虫剤や農薬と変わりません。菌を殺すのに十分かつ最低限の量の毒を使うことで、人体には影響がなく、菌だけをやっつける効能を持たせます。
たとえば、人間のHPは1000ぐらいだとします。その人間の体内にはHPが平均10の病原菌がいっぱいいて、そのせいで病気だとします。菌を殺す毒の強さは15あれば十分でしょう。HPが14のやつがいるかもしれないからです。で、HP1000の人間に15の威力がある毒を投与すると、人間はその毒の影響でダメージを受け、HPが985まで低下します。かたやその体内の菌はHPが0になり、全滅します。病原菌がいなくなって落ち着いた人間の体は薬の投与をやめると徐々に回復し、やがてHP1000に戻ります。子供を叱る、というのはこれと全く同じことです。ガツンと叱った最低限のダメージで、将来の大失敗を防ぐ効能をもたせる、という訳です。
叱るタイミングと強さ
まず、叱るタイミングは「すぐ」です。状況は刻一刻と変化しますし、記憶も1秒毎に脳内で圧縮アーカイブされるため、どんどんディテールが失われていきます。つまり、叱る方も叱られる方も何がダメだったのかを忘れてしまいます。なので、できるだけ早いほうがいいです。
叱る強さは失敗やその失敗がもたらす損失の大きさに比例…ではなく、その行動が「その子の将来にどれだけ悪影響をもたらすか」で決めます。当然、その悪影響の大きさに比例して、ざっくり以下の3段階に分類できます。①口頭注意「これはやってはだめ。」、②怒鳴りつける「だめ!何をしてるんだ!」、③叩く。いきなり叩くことはまれですが、何回も口頭で叱って説明して、理解しているにも関わらず、悪意を持ってやっている場合には叩くべきです。ここで悪意とは、わざと誰かの気分を害するようなことをしている場合と、明らかに自分がやるべきことをやっていない場合です。
例えば、3歳の友達のお気に入りのおもちゃを、4歳の息子がバッと奪って「ほれほれ〜取り返してみろ〜」とやっていたとします。3歳の友達は泣いています。これは悪意のあるいたずらです。3歳の子の楽しむ権利を奪い取って、4歳が正しくない楽しみ方をしている悪意のある行為です。この行為を見逃すと将来、相手を思いやりながら共に良い(win-winの)関係を構築していくといった、正しい能力が身につかない可能性が高いです。
また「ここは車が走る道だから自転車には乗らずに渡ろうね」といつも言っている道路を、4歳の息子が一緒にいる他の子達にいいカッコしたいがために、自転車で渡ろうとした、もしくは渡ったとき、これは厳罰☠です。危険な行為をしたこと、そしてなにより親が決めた掟を守らなかったことです。調子に乗って命を落とすパターンです。これを見過ごすと、ノリで強い酒を一気飲みする大学生になります。自分の命を守ることを疎かにした場合、殴ってでも命の重さを教えるべきです。
叱ってはいけない場合
悪意のない失敗、例えば①お手伝い中にコップを割った、②お絵かき帳の上にあったお父さんのスマホをどけようとして落として壊した、などです。①は善意のチャレンジ失敗、②はお父さんが悪いです。これで叱ることのデメリットは計り知れません。こんなことで叱られると子供は納得しないので、以後、親が叱っても効果は薄いでしょう。これは年齢にかかわらずです。どんな小さな子でも、矛盾には敏感です。叱る、というのはそれ相応の裏付けが必要な行為なのです。
それでも叱るべき
ただ、親も完璧な人間ではありません。失敗もしますし、間違った叱り方もします。それを恐れないようにしてください。つまり、これは叱ったほうがいいよね?と思ったときは叱ってください。自分の子はもちろん、他人の子でもです。言わずもがなですが子供を叱れない親はダメな親です。叱らない、というのはその子の将来に責任を持たない、ということですから。これは間違いありません。もし間違った叱り方をした場合でも、後で反省して、必要があれば叱った子供に謝ればいいのです。そんな親の背中を、子供はいつも見ています。